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若手研究者が学術研究の世界に踏み出す際に身につけておきたい重要なスキルの一つが、研究の枠組み(research framework)を構築する力です。研究枠組みは、研究全体の構造を明確にするとともに、その研究がなぜ妥当であるのかを論理的に説明する役割を担います。強固な研究枠組みは、既存文献を批判的に検討することで、自身の研究をこれまでの知識体系の中に位置づけます。その過程で、未解明の課題や研究ギャップを明らかにし、自らの研究がどの点に新規性や意義を持つのかを示すことが可能になります。さらに、研究課題や仮説と、研究デザイン・方法論との整合性を明示する点でも、研究枠組みは重要な役割を果たします。
研究枠組みには、大きく分けて**概念的枠組み(conceptual framework)と理論的枠組み(theoretical framework)**の二種類があります。両者はいずれも研究を体系的に整理するという共通の目的を持ちますが、適用範囲や役割には明確な違いがあり、その選択は研究の進め方や論文の構成にも影響を与えます。
本記事では、概念的枠組みと理論的枠組みそれぞれの定義と重要性を整理したうえで、両者の違いをわかりやすく解説します。さらに、研究目的や分野に応じて、どのように研究枠組みを選択・活用すべきかについても考察していきます。
概念的枠組みとは?
概念的枠組みの本質は、次の二つの核心的な問いに答えることにあります。「なぜこの研究が重要なのか?」、そして 「既存の知識体系にどのような新たな貢献をもたらすのか?」 です。1言い換えれば、概念的枠組みとは、研究者が複数の概念や変数の関係性を理解し、研究全体の方向性を定めるための道標といえます。概念的枠組みは、質的研究においては研究を既存の知識体系の中に位置づけるために有効であり、量的研究においては測定可能な変数同士の関係を整理する役割を果たします。いずれの場合も、研究の焦点を明確にし、議論の軸をぶらさないための重要な枠組みとなります。
概念的枠組みの構築は、まず当該分野における現在の知識状況を整理することから始まります。多くの場合、詳細な文献レビューを通じて、すでに明らかになっている知見を把握します。その上で、十分に検討されていない課題や研究ギャップを特定し、なぜ新たな研究が必要なのかを示します。さらに、研究方法論のアプローチを明確にし、それらのギャップをどのように検証・解消しようとしているのかを説明します。このようにして構築された概念的枠組みは、研究を実施する正当性を示すとともに、その研究がより広い学術的文脈の中でどのような意義を持つのかを明確にします。結果として、研究が明確な目的意識を持ち、方法論的にも一貫性のある形で進められていることを示すことができます。
概念的枠組みをより具体的に理解するために、従業員のモチベーションと生産性の関係を扱う研究を例に考えてみましょう。概念的枠組みに基づく研究では、内発的動機づけ(仕事そのものへの達成感や満足感)と、外発的動機づけ(報酬やボーナスなど)が、仕事のパフォーマンスにどのような影響を与えるのかを整理します。例えば、内発的動機づけは高い関与や持続的な生産性向上につながる可能性がある一方で、外発的動機づけは短期的な成果を高める効果を持つと考えられるかもしれません。こうした要因間の関係を体系的に整理することで、研究者は「どの動機づけが、どのような条件で生産性に影響するのか」という研究の方向性を明確に示すことができます。
理論的枠組みとは?
理論的枠組みとは、研究課題を理解するための土台となる確立された理論体系を指します。言い換えれば、研究課題がなぜ存在するのかを理論的に説明し、研究を既存の知識体系の中に位置づけるための基盤です。この枠組みは、研究者が既存理論をどのように適用・調整して研究を構築しているかを示すものであり、研究の焦点を明確にするとともに、学術的に一貫した文脈に根ざしていることを保証します。
理論的枠組みは、主に量的研究で用いられることが多く、研究が確立された科学的原則に基づいていることを示す役割を果たします。枠組みを構築する際には、まず研究を支える主要な概念や理論を特定し、それらを明確に定義する必要があります。次に、これらの要素を論理的に結びつけ、各理論や概念が研究課題とどのように関係しているのかを説明します。つまり、理論的枠組みとは、研究者が理論を自身の研究文脈の中でどのように統合し、研究の設計や解釈に方向性を与えているかを示すものなのです。
先ほどの「従業員のモチベーションと生産性」の例をさらに発展させて考えてみましょう。このテーマを理論的枠組みに基づいて研究する場合、研究者は例えばアブラハム・マズローの欲求階層説を援用し、モチベーションが生産性にどのような影響を与えるかを分析することが考えられます。この枠組みでは、健康や安全といった基本的欲求が満たされることで生産性が向上する仕組みや、自尊心や自己実現といった高次の欲求が長期的なパフォーマンス向上にどのようにつながるのかを理論的に検討することが可能になります。このように、マズローの理論は、職場におけるモチベーションと生産性の関係を解釈するための理論的なレンズとして機能します。
概念的枠組みと理論的枠組みの相違点
両枠組みとも学術研究において不可欠な要素ですが、その適用範囲と目的には明確な違いがあります。理論的枠組みは研究内容を既存の知識体系と結びつける役割を果たすのに対し、概念的枠組みは研究者が新たに構築すべき関係性を提案・探求することを可能にします。このため、厳密かつ影響力のある学術的探究を行う上で、これら二つの枠組みの違いを理解することは極めて重要です。これらの枠組みの相違点を把握することで、研究設計、方法論、研究成果の提示方法において明確な方向性が定まります。
| 観点 | 概念的枠組み | 理論的枠組み |
| 定義 | 関連する概念と視点の統合。研究において重要な要素を明らかにし、それらの相互関係を示す。 | 文献レビューおよび研究過程で収集したデータに基づいて構築される。研究の理論的構成要素を明確に示す。 |
| 目的 | 変数間の関連性を可視化すること ― 研究者が理論を解釈する際の助けとなり、研究自体に論理的な構造を与える。 | 研究課題が存在する理由を説明すること ― 既存の理論が述べている内容や、当該研究テーマに関する既知の知見に基づいている。 |
| 適用範囲 | 特定の概念とその関係性に焦点を当てた分析 ― 詳細な分析を可能にする。 | 確立された理論に基づいており、広範で一般的な視点を提供する。 |
| 活用方法 | 新たな現象の探求や仮説の構築を行う場合。確立された理論が存在しない探索的研究や、質的研究に最適。 研究対象となる変数や概念、およびそれらの相互関係を明確に示す。研究課題を理解するための全体的な戦略を導く。 | 既存の理論を検証したり、既存の知見を発展させたりする場合。既存の理論に基づく説明的研究や、量的研究において用いられる。研究者がデータを分析し、潜在的なテーマやパターンを明らかにすることを可能にする。 |
研究フレームワーク選定のポイント
研究目的に応じた適切なフレームワークを選択することは、研究の妥当性と関連性を高める上で極めて重要です。以下に、適切なフレームワークを選定する際の具体的なポイントをご紹介します。
- まず第一に、ご自身の研究が新たな関係性の探求(概念的)を目的としているのか、それとも既存理論の構築・拡張(理論的)を目的としているのかを明確にしてください。
- 研究目的を裏付ける確立された理論が存在する場合は、理論的フレームワークが適しています。一方、そのような理論が存在しない場合には、概念的フレームワークを使用するべきです。
- 次に、研究分野の特性と、研究が探索的・記述的・説明的のいずれかの性質を持つかを考慮します。複雑性の高い研究や学際的研究の場合は、概念的フレームワークがより適しています。同様に、定量的研究では理論的フレームワークが、定性的研究では概念的フレームワークが採用される傾向があります。
研究フレームワークとは、研究の設計図とも言えるものです。不十分に定義されたフレームワークは、研究の焦点の欠如、曖昧な目的設定、効果的な分析の妨げにつながる可能性があります。このため、若手研究者にとっては、研究フレームワークの違いを理解し、自身の研究課題に最も適したフレームワークを選択することが極めて重要です。これにより、学術関係者や関係者に対して効果的に研究成果を伝える能力が大幅に向上するでしょう。
参照:
- https://journals.lww.com/academicmedicine/fulltext/2020/07000/the_distinctions_between_theory,_theoretical.21.aspx
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