研究課題とは何か? その定義方法と具体例を解説 

by Dhanya Alex
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研究課題とは、研究が解決を目指す特定の問題や、既存研究における知識の空白を、明確かつ簡潔に示したものです。研究課題は研究プロセス全体の出発点となり、研究目的の設定や研究方法の選択を方向づける基盤として機能します。その問題が理論的なものであれ、実践的なものであれ、あるいはその両方を含むものであれ、研究課題を明確に定義することは、研究の関連性と一貫性を確保する上で不可欠です。

研究課題が重要である理由は、研究の焦点を適切に絞り込み、研究目的の妥当性を示す根拠となり、特定の分野に対して有意義な知見を提供する点にあります。適切に定義された研究課題は、研究対象の範囲を明確にするだけでなく、学術関係者や実務者、資金提供機関などに対して、研究の価値や意義を伝える際にも重要な役割を果たします。[1] 研究課題は通常、既存文献を十分に検討した後、研究デザインを決定する前の段階で特定されます。これにより、研究の枠組みと調査の意義を明確に位置づけることができます。

本稿では、研究課題とは何かを改めて整理したうえで、その重要性や効果的な定義方法について解説します。研究を始めたばかりの方から、既存の研究をさらに精緻化したいと考えている方まで、強固な研究課題を構築するために押さえておくべきポイントを理解するためのガイドとなることを目指します。

あわせて、研究課題の特定と発展に関わる具体的な手順を紹介するとともに、理論的研究課題、応用研究課題、アクションリサーチ課題といったさまざまなタイプについても検討します。さらに、複数分野の実例を通して、研究課題を自身の研究にどのように落とし込めばよいのかを、実践的に理解できるようにします。

【要約】研究課題の要点

  1. 研究課題とは、関心のある分野、改善が必要な状況、解決すべき課題、あるいは理論的・実践的な問題領域を指す概念です。 
  2. あらゆる研究プロジェクトの基盤となるものであり、研究の方向性、目的、方法論を決定づける重要な要素です。 
  3. 適切に定義された研究課題は、研究対象の重要性を明確に提示し、その文脈を位置づけるとともに、調査の範囲と目的を明確に示すものです。 
  4. 研究課題を定義する上で最も重要なのは、「この問題はなぜ重要なのか?」という『So What?』の問いに答えることです。これにより研究の意義が正当化され、研究成果が人類の理解に貢献し、実践的な解決策につながることが保証されます。 
  5. 研究課題を定義するプロセスでは、まず広範な関心領域を特定し、問題を詳細に調査・分析した上で、主要な変数とそれらの関係性を明らかにします。さらに、現実世界への影響を考慮し、最終的に焦点を絞った明確な問題提起文を作成します。 
  6. 学問分野や研究目的に応じて、理論的研究課題、応用研究課題、行動指向型研究課題など、様々なタイプの研究課題が存在します。 
  7. 理想的な研究課題とは、独創性があり、必要性が認められ、実現可能で、具体的であり、かつ実証的な根拠に基づいているものです。 

研究課題とは何か?

研究課題とは、研究者が体系的な調査を通じて解明・解決しようとする特定の問題、課題、あるいは既存研究における知識の空白を指します。研究課題は研究の焦点を明確にし、研究目的や研究課題の設定を導く指針として機能します。明確で意義のある研究課題を設定することは、有意義で関連性の高い研究プロジェクトを設計するうえで、最初に取り組むべき重要なステップです。 適切に定義された研究課題は、探究するテーマの重要性を明示するとともに、読者に研究の方向性を分かりやすく伝えます。問題を特定の理論的・実践的文脈に位置づけることで、調査の範囲が明確になり、研究の進め方や成果の示し方に一貫した枠組みが生まれます。

また、研究課題は単に「知識の空白」を指摘するだけでは不十分です。質の高い研究課題には、「なぜこの問題に取り組む必要があるのか」という問いに対する明確な答えが求められます。特に社会科学分野では、その問題の関連性や意義を正当化することが不可欠であり、理論・実践・政策といった幅広い文脈の中で、研究の価値を示す必要があります。

このように、研究課題は研究全体の基盤を形成すると同時に、当該分野に対してどのような新たな知見や貢献をもたらし得るのかを明示する役割を果たします。

研究課題・研究課題・研究テーマの違い

観点定義 目的具体例
研究テーマ研究の方向性を示す広範な研究領域。現在のトレンドや関心事、当該分野の関連性から着想を得ることが多い特定の分野や主題領域をさらに深く探求するための基盤となる。  高校生におけるオンライン学習の実態調査 
研究課題研究テーマ内に存在する具体的な問題点、困難点、あるいは知識の空白領域。解決すべき課題や理解すべき事項を明確に定義するために設定する。  オンライン学習環境におけるインターネット接続環境が学生の学習意欲に与える影響についての理解不足
研究課題 研究課題から導かれる焦点を絞った研究可能な質問。本研究が回答を目指す核心的な問いである。研究調査の方向性を定め、問題の解決策を見出すための指針となる。  限られたインターネット接続環境が、高校生のオンライン学習への参加意欲にどのような影響を及ぼすのか? 

研究課題の多様な類型

研究課題は、その目的・範囲・応用分野によって様々な形態をとります。直面している課題の種類を把握することは、適切な研究デザインと方法論を選択する上で極めて重要です。一般的に、これらは以下に示す3つの主要なカテゴリーに分類できます。[2] 

理論的研究課題

定義:理論的研究課題は、抽象的概念、枠組み、あるいはモデルを探求することで、既存の知識体系を拡張することを目的としています。これらの課題は、直接的な現実世界の問題解決を目的とするのではなく、基礎原理や関係性、現象の本質を理解することに重点を置いています。 

目的:特定の学問分野における理論、モデル、あるいは説明体系の構築・精緻化を図ることにあります。 

適用分野:哲学、理論物理学、数学、社会学、教育学などの分野でよく見られる課題です。 

具体例: 認知負荷理論と学習者の知識保持率の関係を探求する理論的研究課題では、精神的負荷が教育現場における学習者の情報保持能力にどのような影響を与えるかを明らかにしようとします。これは、学習理論の理論的枠組みを拡張することを目的としており、必ずしも即時的な実用的解決策を求めるものではありません。 
社会的アイデンティティ理論がオンラインコミュニティにおける集団行動をどのように説明できるかを研究する場合、デジタル空間におけるアイデンティティの動態と集団間相互作用についての理論的理解を深めることを目的とします。ここでも、直接的な実用的応用よりも、当該分野の理論的基盤を拡充することが主眼となります。 

いずれの場合も、課題の目的は理論的概念の探求と拡張にあり、必ずしも即時的な現実世界への応用を求めるものではなく、むしろ当該分野のより広範な理解に寄与することを目指しています。 

応用研究の課題

定義応用研究とは、既存の理論・知見・手法を活用し、実社会における具体的な問題に対して実践的な解決策を導き出すことを目的とする研究手法です。医療、教育、ビジネス、テクノロジーなどの分野で直面する課題を対象とし、理論研究とは異なり、研究成果の実用性や即時的な応用可能性を重視して進められます。

目的:応用研究の主な目的は、現場における実践の改善や問題解決、意思決定の支援にあります。イノベーションの促進、業務効率の向上、成果の最適化、さらには政策立案に資する知見の提供を通じて、社会的・組織的な価値の創出を目指します。

適用分野:応用研究は、主にビジネス、工学、公衆衛生、教育政策などの分野で活用され、実務や制度設計と密接に結びついた研究が行われます。

具体例:応用研究の課題としては、例えば、小規模なテクノロジー企業における従業員の離職率を低減するための効果的な戦略を検討する研究が挙げられます。このような研究では、人材の定着と職場環境の安定化を実現するための実践的な介入策を導き出すことが目的となります。また、糖尿病患者の服薬遵守率を向上させるためのモバイルヘルスアプリの有効性を検証する研究も、応用研究の一例です。この場合、患者の治療成果の改善と医療システム全体の効率化に貢献することが期待されます。いずれの例においても、応用研究は現実の課題解決を出発点とし、既存の知識を現場に適用することで、専門的または地域社会の文脈における実行可能な解決策を模索する点に特徴があります。

アクションリサーチの課題定義

定義アクションリサーチとは、現実の課題解決を目的とする応用研究の一形態であり、実践的な解決策の探求に加えて、研究者自身の積極的な関与、状況に応じた変革、そして継続的な省察を重視する研究手法です。アクションリサーチの課題は、特定の状況下における喫緊の問題を対象とし、「計画 → 実践 → 観察 → 省察」という協働的かつ循環的なプロセスを通じて取り組まれます。この手法は参加型アプローチを特徴とし、教師、管理職、医療従事者など、研究対象となる現場に直接関わる実務者が主体となって実施される点に特徴があります。

目的:アクションリサーチの主な目的は、教室、組織、地域社会などの特定の文脈において、実際の変化や改善を生み出すことにあります。単に知見を得ることにとどまらず、実践を通じて問題解決と学習を同時に進める点が特徴です。

適用事例:アクションリサーチは、教育分野、医療分野、地域開発、組織変革など、実践と改善が密接に結びついた領域で広く活用されています。 

具体例:アクションリサーチの課題の例としては、9年生のクラスを担当する教師が、生徒の学習意欲を高めることを目的に新たな協働学習手法を導入し、その効果を観察するとともに、生徒からのフィードバックをもとに手法を継続的に改善していくケースが挙げられます。また、病院の病棟チームが患者引き継ぎ時のミス削減を目的として新しいシフト間連絡プロトコルを試験的に導入し、スタッフ自身が設計・実施・評価のすべての段階に関与するケースも、アクションリサーチの典型例です。いずれの場合も、研究は実務者自身が主体となって進められ、特定の状況下における喫緊の課題解決と、継続的な改善に資する実践的知見の創出を同時に目指します。

研究課題の定義方法

研究課題を明確に定義することは、研究の方向性と焦点を定める上で極めて重要です。以下に、強固で研究可能な課題を定義するための段階的なガイドをご紹介します: 

ステップ説明具体例
1. 関心のある広範なテーマを特定する自分の興味や専門分野に関連する一般的な分野を選択する。  オンライン教育 
2. 予備的な文献調査を実施する 既存の研究をレビューし、これまでに何が行われており、どのような研究ギャップが存在するかを把握する。 オンライン学習の成果に関する研究は存在するが、仮想環境における学生の学習意欲についての研究は限られている。 
3. 研究対象を絞り込む  特定の対象集団、学習環境、変数などを考慮してテーマを精緻化する。 農村地域の高校生におけるオンライン学習環境下での学習意欲 
4. 研究上のギャップまたは問題を明確にする 現在の研究において何が不足しており、どのような点が未解明あるいは問題となっているかを明確に定義する。  農村地域の学生におけるオンライン学習時の学習意欲に対するインターネット接続環境の影響に関する研究は限定的である。 
5. 問題定義を策定する 問題の内容、その背景、および重要性を簡潔にまとめた声明を作成する。 「オンライン学習が普及しているにもかかわらず、農村地域の高校生におけるインターネットアクセスの不備が学習意欲に及ぼす影響については、ほとんど解明されていない」 
6. 研究目的または研究課題を設定する 調査の指針となる具体的な目標または質問を設定する。 目的:インターネット接続環境と学生の学習意欲の関係性を検証すること 
研究課題:インターネット接続環境の制約は、学生のオンライン授業への参加意欲にどのような影響を及ぼすのか? 

研究課題の主要な特徴

研究課題の特性は、その研究が取り組む価値があるかどうか、また研究プロジェクトの範囲内で効果的に探究可能かどうかを判断する上で重要です。質の高い研究課題は、単に明確に定義されているだけでなく、理論的基盤、実践的な制約条件、そして研究者の能力と整合性が取れている必要があります。

主な特徴は以下の通りです

  • 知識のギャップを埋める: 
    • 当該課題は、既存の研究において不足している、あるいは不完全な領域を明確に指摘するものでなければなりません。 
    • このギャップを埋めることで、知識の発展に寄与することが求められます。 
  • さらなる研究への導線となる: 
    • 優れた研究課題は、継続的な調査研究とより深い探求への扉を開くものでなければなりません。 
    • 関連する新たな疑問や研究分野の開拓を促すものであるべきです。 
  • 明確かつ簡潔に表現されている: 
    • 課題は率直かつ正確な言葉で定義されている必要があります。 
    • これにより、研究の目的が他者にも容易に理解できるようになります。 
  • 理論に根差している: 
    • 研究課題は既存の理論的枠組みと関連付けられている必要があります。 
    • この理論的基盤は、研究デザインの策定や結果の解釈において重要な指針となります。 
  • 1つ以上の変数と関連している: 
    • 通常、研究課題は測定可能あるいは観察可能な変数を含み、これらの変数を特定することで体系的なデータ収集と分析が可能になります。 
  • 時間的・予算的制約内で実現可能である: 
    • 課題は利用可能な時間枠とリソースの範囲内で管理可能なものである必要があります。 
    • 研究者は課題を選定する際に、現実的な制約条件を考慮しなければなりません。  
  • データの利用可能性: 
    • 問題に対処するためには、既存の十分なデータが存在するか、あるいは新たなデータを収集可能な見込みがある必要があります。 
    • 信頼性の高いデータへのアクセスは、有意義な分析を行う上で極めて重要です。 
  • 方法論的強みとの整合性: 
    • 当該問題は研究者の専門スキル、使用ツール、および方法論的専門知識に適したものであるべきです。 
    • この整合性により、研究結果の質と信頼性が向上します。 

よくある質問

Q1. 研究課題をどのように特定すればよいでしょうか?また、それが「十分に価値のある」ものかどうかをどのように判断すればよいのでしょうか? 

A1. 研究課題の特定には、興味深くかつ研究可能なテーマを選びつつ、既存の知識体系におけるギャップや課題に対応することが求められます。「優れた」研究課題とは、明確で具体的、かつ実現可能であり、当該分野に新たな知見をもたらす可能性を有しているものを指します。関連する文献レビューに基づき、未解明あるいは未解決の問題を特定することが重要です。

例えば、教育技術分野における適切な研究課題としては:「インタラクティブ学習アプリの活用は、高校生のSTEM科目への学習意欲をどのように向上させるか?」といったものが挙げられます。この課題は具体的で測定可能、かつ学術的に意義のあるものです。一方、「テクノロジーは学習にどのような影響を与えるか?」といった課題は「悪い」研究課題の典型例です。これは範囲が広すぎて曖昧であり、研究の方向性が定まらないため、有意義な形での調査が困難です。

要するに、「優れた」研究課題とは、明確に定義可能で実用的な意義があり、具体的な行動指針を導き出せるものであるべきです。  

Q2. 研究課題を明確に定義することはなぜ重要なのでしょうか?初期段階でどの程度詳細に設定すべきでしょうか?  

A2. 研究課題の定義は極めて重要です。なぜなら、研究全体の方向性と焦点を定め、研究課題の設定、調査方法、分析手法の基盤となるからです。初期段階においては、研究の範囲と意義を確立するために問題を明確に定義する必要がありますが、同時に過度に厳密に固定化しないよう注意が必要です。

この段階では、初期調査の指針となる程度の詳細さは必要ですが、既存文献の調査を進め、より深い知見を得るにつれて修正が可能な柔軟性も残しておくべきです。この適度な柔軟性が、より思慮深く情報に基づいた研究プロセスを支えます。 

Q3. 研究課題を特定する際によくある誤りにはどのようなものがあるでしょうか? 

A3. 研究課題を特定する際によく見られる誤りとしては、以下の点が挙げられます: 
1. テーマが広すぎたり曖昧すぎたりして、実用的・学術的な意義に欠ける場合 
2. 一般的なトピックと具体的な研究課題を混同してしまう場合 
3. 時間的な制約やデータ入手可能性といった実現可能性の要素を考慮しない場合 

例えば、「学校におけるインクルーシブ教育」というテーマは範囲が広すぎますが、「通常学級における学習障害のある生徒へのインクルーシブ学習戦略実施において、教員が直面する課題」といった具体的で焦点を絞った研究課題の方が、より明確で実践的な研究方向性を示します。     

Q4. 研究課題はどのように研究課題や仮説と関連しているのでしょうか? 

A4. 研究課題とは、研究の基盤となるものであり、解決すべき具体的なギャップや問題領域を明確に定義するものです。これが研究課題や仮説の設定につながり、問題を調査するための明確で検証可能な方向性を提供します。本質的に、研究課題や仮説は研究課題から導き出されるものであり、研究の設計方針、データ収集方法、分析手法を導く指針となります。 

Q5. 研究において複数の研究課題を設定することは可能でしょうか?  

A5. はい、研究において複数の研究課題を設定することは可能ですが、明確性と深みを保つためには、単一で明確に定義された研究課題に焦点を当てることが一般的に推奨されます。複数の課題を設定する場合、それらは密接に関連しており、中心的なテーマや目的に沿って整合性が保たれている必要があります。こうすることで、研究の一貫性、管理可能性、焦点の明確さが維持され、研究活動が散漫になるのを防ぐことができます。

論文執筆、プロジェクト設計、研究提案書作成など、どのような段階においても、研究課題を明確に定義することは、焦点を絞った有意義な研究を実施するために不可欠です。このガイドは、ご自身の関心領域を探求し、研究課題を精緻化し、好奇心を体系的な研究課題へと発展させるための出発点として活用いただけます。 

References 

  1. Mildeová, S. (2013). Research problem description and definition: from mental map to connection circle. Journal on Efficiency and Responsibility in Education and Science, 6(4), 328-335. 
  2. Greenwood, D. J. (2008). 12. Theoretical Research, Applied Research, and Action Research. Engaging contradictions: Theory, politics, and methods of activist scholarship, 6, 319. 

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