研究デザインとは何か? 種類と具体例を解説 

by Divya Sreekumar
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research design

研究デザインとは、特定の研究課題に取り組むための研究実施方法の戦略あるいは概要を指し、データ収集方法と分析手法も包含する概念です。適切に設計された研究デザインは、研究の方向性を明確に示すとともに、研究者の計画通りに研究が進行することを保証します。構造が整った研究デザインは、研究全体の設計図として機能し、研究目的を達成するための適切な手法の使用と、妥当かつ正確な結果の取得を可能にするものです。 

適切に設計された研究調査は、科学の発展において極めて有益です。十分な情報量と正確な結果を提供することで、他の研究者がこの研究結果を基盤としてさらなる研究を実施し、結果の妥当性を検証することが可能となります。一方、研究デザインが不十分である場合、不正確で信頼性に欠ける結果が生じる可能性があり、これらは他研究者による利用が困難となり、結果として科学の進歩を阻害することになりかねません。 

この記事では、研究デザインの主要要素について論じるとともに、各種研究デザインの種類がもたらす利点について、具体的な事例を交えながら解説します。 

研究デザインとは何か?

研究デザインとは、研究計画段階で策定される枠組みの一種であり、研究を適切な方向性に導くために用いられます。これには、研究課題の設定、適切な研究方法の選択、データ収集・分析手法の決定などが含まれます。適切に設計された研究計画は、妥当性・信頼性・正確性の高い研究成果を生み出すことを可能にします。 

優れた研究デザインには通常、以下の要素が含まれます: 

  • 明確な研究目的:研究課題は明確に定義された言葉で表現されなければなりません。 
  • 標本抽出:標本サイズ、抽出方法、および包含・除外基準を明確に規定する必要があります。 
  • データ収集と分析:これらの手法は、選択した研究方法論の種類に適したものでなければなりません。 
  • 研究方法論:研究全体のアプローチ方法を読者が理解できるよう記述します。 
  • 研究期間:研究の背景をより深く理解するため、研究期間を明確にするとともに、データ収集と分析に必要な時間を明記します。 
  • 倫理的配慮:インフォームド・コンセントや守秘義務など、研究の信頼性を確保するために必要な重要な倫理的事項を記載します。 

研究デザインの主な目的

研究デザインの第一の目的は、変数間の因果関係を評価する研究計画を作成することである。研究デザインには以下の複数の目的があります。 

  • 研究のロードマップを作成し、研究者が研究の進捗状況を追跡する際の指針とするため。 
  • 研究目的と研究成果の整合性を確保するため。 
  • ガイドラインを提供することで、データ収集・分析時の誤りを最小限に抑えるため。 
  • 他の研究者が研究成果を再現できるようにするため。 
  • 研究成果の妥当性と正確性を保証し、研究の信頼性を高めるため。 

研究デザインの主要構成要素

研究デザインにはいくつかの重要な要素があり、これらを適切に組み込むことで、体系的かつ完全な研究設計を構築することが不可欠です。 

  • 研究課題と目的:研究プロセスの指針となります 
  • 変数:その関係性を解明すべき概念 
  • サンプリング手法:研究の種類に応じて、適切な規模の適切なサンプルを選定する必要があります 
  • データ収集方法:研究内容に応じて選択し、調査、インタビュー、観察、実験などが考えられます 
  • データ分析手法:これらの手法は収集するデータの種類に基づいて選択されるべきです 

研究デザインの類型

研究デザインは大きく定量的研究と定性的研究の2つに分類されます。 

定量的研究デザイン

定量的研究とは、関心対象の変数を記述・予測・制御するために、数値データを収集・分析する研究手法です。その結果は数値やグラフで表現され、変数間の因果関係の検証、予測の立案、結果の一般化に活用されます。この研究デザインは、理論を検証し、その結果に基づいて理論を承認または棄却する際に用いられます。 

以下の表では、定量的研究デザインの主な種類を並べています。 

定量的研究デザインの種類説明具体例
記述的研究研究対象のテーマを記述し、その特性・傾向・分類を明らかにするために用いられる。研究対象の「何が」「どこで」「いつ」「どのように」行われているかを理解するのに役立つが、「なぜ」行われているかについては解明できない  栄養補助食品を利用する人々の所得水準に関する調査研究 
相関研究変数間の関係性(強さと方向性)を明らかにするために用いられる睡眠時間と幸福感の相関関係に関する研究
実験的研究 変数間の相互作用を科学的に研究し、仮説の設定と検証を行う方法新型インフルエンザワクチンの有効性を検証する研究
説明的研究限られた情報しかない事象を解明するために用いられる
研究者自身の仮説や考察に基づいてテーマを探求する
思春期のメンタルヘルス改善を目的とした登校時間遅延に関する今後の研究を導くための仮説構築
診断的研究 事象が発生する根本的な要因を特定し、解決策を見出すための研究 顧客レビューを分析し、製品改善が必要な具体的なポイントを明らかにする研究

質的研究デザイン

質的研究とは、数値化されていないデータを収集・分析・解釈する研究手法である。5 この手法では論理的推論を用い、結果の信頼性よりも妥当性を重視します。本研究で得られた観察結果は言葉で表現され、個人が事象や状況、対象に対して持つ主観的認識を理解する上で重要な役割を果たします。この種の研究は探索的性質を持ち、収集データに基づいて仮説や理論を生成するために用いられます。 

以下の表では、各種質的研究デザインの種類、定義、および具体的な研究デザイン例を並べています。 

質的研究デザインの種類説明具体例
現象学的アプローチ人々の体験に対する主観的理解COVID-19患者ケアにおける看護師の体験に関する研究
民族誌的アプローインタビューやフィールドノートを通じて、現象の社会的文脈を理解する手オンラインゲームコミュニティを調査し、プレイヤー間の社会的構造・コミュニケーションパターン・共有規範を明らかにする研究
ケーススタディ個人または集団を詳細に調査し、変数間の因果関係を明らかにする手法喘息研究における少数民族の被験者リクルート率格差の要因を解明する事例研究
グラウンデッド・セオリー既存データを体系的にレビューして理論を構築する手法。このタイプでは、研究対象となる問題はこれまで十分に研究されていない点が特徴特定の製品の受容プロセスを研究する場合、研究者はインタビューを通じてデータを収集し、得られたデータを分析してパターンを抽出する。これらのパターンを基に、その製品がどのように受容されるかを説明する理論を構築する。 

定量調査と定性調査の比較

以下に、定量調査と定性調査の主な相違点を挙げます。 

パラメータ質的研究量的研究 
目的と研究デザインアイデアの探索・仮説の立案を目的とした、より主観的なアプローチ理論や仮説の検証、因果関係の解明を目的とした、測定可能でより体系的なアプローチ
データ収集方法半構造化インタビュー/アンケート(自由記述式質問)、文書調査・文献レビュー、フォーカスグループディスカッション、事例研究、民族誌学的調査実験、統制観察、評価尺度または選択式質問を用いたアンケート。手法としては実験的、準実験的、記述的、あるいは相関分析などが用いられる
データ分析内容分析(テキスト中の特定の単語/概念の出現頻度を分析)、グラウンデッド・セオリー(データ収集と分析に基づく仮説構築)、テーマ分析(データから重要なテーマ/パターンを抽出し、問題分析に活用)Excel、SPSS、Rなどの統計解析ソフトウェアを用いた分析
サンプルサイズ小規模大規模
具体例特定製品に関する顧客の主観的意見を把握するためにフォーカスグループや個別インタビューを実施する企業。 得られた知見に基づき、同社はマーケティング戦略の見直しを行う企業が実施する顧客満足度調査。顧客は体験評価を1~5段階の評価尺度で回答する形式

研究デザインの必須特性

学術的誠実性と研究結果の信頼性を確保するため、すべての研究デザインは以下の特性を備えている必要があります。 

  • 中立性:研究は先入観のない客観的な視点を提示するものでなければならない。研究者の事前の予想や期待が、調査結果の報告内容に影響を与えてはならない。 
  • 信頼性:研究は複数回の測定において一貫した結果を示し、偶然による誤差が最小限に抑えられている必要がある。 
  • 妥当性:これは非ランダムな誤差要因の最小化を意味する。 
  • 一般化可能性:研究結果は、調査対象サンプルだけでなく、より広範な母集団にも適用可能でなければならない。 

適切な研究デザインの選択方法

適切な研究デザインを選定する際に考慮すべき主な要素を以下に挙げます。 

  1. 研究課題の性質:研究課題のタイプと研究目的によって、最も適した研究デザインの種類が決まります。例えば消費者の購買行動を研究する場合、質的研究デザインが適しています。一方、仮説検証を行う場合には、数値データが必要となるため、量的研究デザインがより適切です。 
  2. データの入手可能性:量的研究デザインでは大規模で代表的なデータサンプルが存在することが有利に働きますが、質的研究デザインでは小規模なサンプルでも十分である場合があります。 
  3. リソースと時間の制約:利用可能なリソース量と時間の余裕が、必要な研究デザインの種類を決定します。例えば実験デザインは時間とリソースを多く要するため、時間またはリソースのいずれかが不足している場合には、このタイプのデザインは適さないでしょう。 

研究デザインの利点

適切に設計された研究は、研究者に多面的なメリットをもたらします。以下に、研究デザインがもたらす主な利点をいくつか挙げます。 

  • 研究課題と目的が明確に定義されることを保証します。 
  • 研究者が潜在的な限界点を事前に特定できるようにします。 
  • 適切なデータ収集方法の選定に役立ち、結果として時間とリソースの節約につながります。 
  • 他の研究者が研究を再現し、得られた知見を検証することを容易にします。 
  • 研究の信頼性と妥当性を向上させます。 

よくある質問

Q1. 研究デザイン作成時によくある誤りにはどのようなものがあるでしょうか? 

A1. 以下に、研究者が無意識のうちに犯しがちな研究デザイン作成時の主な誤りをいくつか挙げます。 
研究課題と研究目的の不明確さ:研究者は研究課題と目的を明確に、かつ互いに整合性を持たせて記述する必要があります。これにより読者は研究の背景を正しく理解できるようになります。これらの前段階のセクションが明確でない場合、読者は結果を正確に解釈することができません。 
サンプリング方法の問題:選択するサンプルサイズは十分な規模であり、かつ研究対象集団を適切に代表するものでなければなりません。これにより研究成果の一般化可能性を高めることができます。 
不適切なデータ収集・分析手法:データ収集方法と分析手法は、研究デザイン段階で研究内容に基づいて決定する必要があります。提案された研究デザインに適した手法を慎重に選定することで、結果の正確性を確保しなければなりません。 

Q2. 研究の途中で研究デザインを変更することは可能ですか? 

A2. はい、研究進行中に観察結果の変化、不測の事態、制約条件などに対応するため、研究デザインを変更することは可能です。ただし、すべての変更と更新については、全体の研究成果に与える影響を十分に検討する必要があります。 

Q3. 研究に質的調査と量的調査の両方を組み込むことは可能ですか? 

A3. はい、研究においては質的調査と量的調査の両方を組み合わせた「混合研究法」を採用することがあります。この手法により、研究者は自身の発見を検証し、両手法で得られた結果が相互に補完し合うかどうかを確認できます。
 
また、一方の手法で得られた予想外の結果を、もう一方の手法を用いて説明することも可能です。ただし、この方法は追加リソースが必要となるため、より労力とコストがかかる場合があります。したがって、研究デザインは研究を偏りなく円滑に進めるための最初の重要なステップであり、研究成果の正確性と信頼性を確保する上で不可欠です。そのため、研究デザインは慎重かつ明確に策定する必要があります。本記事では、研究デザインの重要性と種類、および様々な側面について解説しており、これらの情報が今後の研究プロジェクトに活用いただけることを願っています。     

参照

  1. Importance of research design—A quick overview. SciSpace. Published December 18, 2023. Accessed April 12, 2025. https://scispace.com/resources/importance-of-research-design/ \
  2. What is research design? Understand types of research design, with examples. Researcher.Life. Published March 14, 2023. Accessed April 15, 2025. https://researcher.life/blog/article/what-is-research-design-types-examples/#Characteristics_of_research_design 
  3. Research design: What it is (plus 20 types). Indeed. Published January 28, 2025. Accessed April 13, 2025. https://www.indeed.com/career-advice/career-development/research-design 
  4. What is quantitative research? Definition, methods, types, and examples. Published March 23, 2023. Accessed April 12, 2025. https://researcher.life/blog/article/what-is-quantitative-research-types-and-examples/ 
  5. 8 Types of qualitative research (with uses and benefits). Indeed. Published March 3, 2025. Accessed April 12, 2025. https://www.indeed.com/career-advice/career-development/types-of-qualitative-research 
  6. Qualitative vs quantitative research. Methods & data analysis. SimplyPsychology. Published December 18, 2023. Accessed April 12, 2025. https://www.simplypsychology.org/qualitative-quantitative.html 
  7. The power of research designs: Choosing the right design for your study. Techspert. Published February 17, 2023. Accessed April 13, 2025. https://techspert.com/blog/the-power-of-research-designs-choosing-the-right-design#:~:text=If%20you%20have%20access%20to,insights%20and%20inform%20important%20decisions 

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